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アヒルの子

−後編−

深夜、ラスはトイレに行きたくなって目が覚めた。
でも眠くて、明日の朝まで我慢しようと寝なおしたが、
そんなこと言ってられないほど限界になってトイレに走った。
紙一重で間に合って、ホッとしたらさっきより眠気が薄らいでいた。
ベットに入ればすぐに眠れるけど、深夜の城は、ちょっといつもと違う感じがして、
そっと城の探検に踏み出した。

何か面白いことを探したがどこも皆寝静まっていて、面白くない。
これなら昼間のほうが楽しい。
暗闇にも飽きてしまって、もう寝ようと、寝室へと戻ろうとしたとき。
明かりが目に付いた。
その明かりはモンスター達の休む部屋のドアからもれていた。
いつもなら皆寝静まってる時間なのに。
やっと面白ものを見つけたと、軽い足取りでモンスター部屋へと近づく。
階段を降り終わったところで、甲高い泣き声が一声あがった。
静まり返った城に反響し響き渡る。
俺は自分があげたわけじゃないのに、叱られるんじゃないかとビクついてしまった。
なんだ今の声は?あんな風に鳴く奴いたっけ?
恐る恐る部屋へと近づく。

明かりの中から、親父の声が聞こえた。
アイツ帰ってきたのか・・・
どっかの国に赴いていたはずで明日帰ってくる予定だったはずなのに。
どうやら予定が早まったようだ。
「新しい仲間だよ。皆仲良くしてね。」
そんな声が聞こえて、また新しいモンスターが仲間に入ったことがわかった。
親父の特技だ。
ここにいるモンスターは皆アイツが仲間にしたらしい。
母譲りのエルヘブンの血がどうたらといっていたが。
よくわからない。

今度はどんなモンスターが入ったんだろうか。
大きかったら背中に乗せてもらおう。
喋れたら、面白い話をしよう。
小さかったらかくれんぼをしよう。
武術ができたら、手合わせして、
魔術ができたら、教えてもらおう
わくわくしながらそっと部屋を覗いてみた。

部屋の真ん中にアイツが座っていて皆が周りを囲むように集まっていた。
肝心の新しい仲間がどこにいるのか探す。
アイツの腕から青い首がニョキッと伸びたかと思うと、上に向かって嘴が開きまたあの鳴き声があがった。
よく見ると青い鳥のモンスターがぐったりと、アイツの腕に収まっていた。

たくさんのモンスターや人間を見て、ホークブリザードは興奮しているようだった。
集まった皆に嘴で威嚇していた。
アイツは何とか宥めようとするが、興奮しすぎて手に負えていない。
凍える息を吐かれて絨毯が凍り付いてしまった。
「あーあ」
という声が聞こえた。

その騒ぎに興味なさそうに眠っていたプックルが起き上がった。
そしてのっそりと親父に近づき
値踏みをするように新入りの周りをグルグルと回る。
更に落ち着きがなくなったホークブリザードは、プックルに襲い掛かろうとした。
とたん、プックルが雄叫びをひとつあげた。
青い鳥は縮み上がった。
何気に他の皆も縮み上がっていたが、そこらへんは見ないフリをする。
「プックル!」
親父がやめなさいと注意した。
プックルは悪びれもせずまた背を向けて横になった。
アイツは窘めたが、プックルの意図をちゃんと酌んでいるのがわかった。
なぜなら、厳しい顔をしていない。逆にありがとうと、言っている顔だった。
横になったプックルは満足そうに、尻尾をまっすぐに伸ばして先だけを小さく動かしていた。
ホークブリザードは大人しくなった。
チラチラと背を向けてるプックルを伺っている。
親父は怯えてる鳥をそっと撫でてやりながら大丈夫、大丈夫とやさしく宥めていた。
「かっこいい」
プックルの威厳を感じて俺は感動した。
普段はやさしくて面倒見がいいんだ。ここにいる皆はそれを知ってる。
安心した皆が再びアイツの回りに集まった。

「名前はなんていうんですか」「ブリードってのは」「省略かよ」「そんなもんでしょ」「どこで会ったの?」

話が盛り上がっていく。俺も仲間に加わろうと部屋に入ろうとした。が
「コイツ!血が」
その一言で足が止まった。ドキッと一瞬嫌な予感がよぎる。
「怪我してたんだ。僕疲れていて応急処置しかできなくて」
ホークブリザード?
昼間のことを思い出して、「まさか」と思った。世の中数え切れないほど同じ種はいるんだ。
そんな偶然。。。でも絶対そうだとなぜか思った。
親父は、血で染まったブリードの翼をそっと広げた。
アイツに体を預けて神妙にしているブリードの頭には普通のホークブリザードとは違って赤く染まった毛が一房ついていた。

「暴れたせいで傷が開いたみたいだね。」
それは明らかに昼間自分の剣を受けた傷だった。

一気に世界が遠のいた気がした。

ホイミンが傷を見て条件反射のようにベホマを唱えた。
「これで大丈夫。」「付け根ってすっごい痛いよね。」「もう怖くないよ。」

皆のそんな言葉が酷く遠くに聞こえて、遠いのに頭にグワングワンと響いた。

もう、

足が前に進まない。

本当は後一歩のはずなのに
自分と、この部屋のとの距離がひどく遠いものに感じた。
中は楽しそうなのに、仲間に入りたいのにでも自分はそんな資格あるのだろうか。
「かわいそうに」
という声が聞こえて

ラスはいた堪れずその場を立ち去った。

コドランが、部屋の外にいるラスの存在に気がついた。
いつものように遊んでもらえると思って嬉しそう後を追う。

「・・・ついてくんな」
そう言ったつもりだが自分は今声に出したかだろうか。
雲の上を歩いているような感覚で頭はボンヤリとしていた。
それでもコドランは去らずにパタパタとついてきた。
「ついてくんなって言ってるだろ。」
今度は、確かに声を出した。
今は誰とも会いたくない。
ラスの様子がいつもと違うのを感じて、コドランは首をかしげる。
それでも諦めずにラスの前に回りこんで遊んでとアピールして目の前で飛び跳ねた。
「殺すぞ!!」
イライラして怒鳴りつけた。
怒鳴り声にビクッと驚いたコドランは身をひいてキューっと震える。
頭を抱えて怯えるコドランを見て、胸が痛んだ。

見ていたくなくて、走り去った。

部屋に戻って、ベッドに入った。
さっさとこんな気分は忘れてしまおうと思った。

眠気はとうの昔に去ってしまって帰ってくる気配は無い。
外はめずらしく風もなく、キーンとするくらい静かなのに
それに比べ体の中は、ざわざわと騒がしい。
騒がしいのに、どれもこれも何を主張して騒いでいるのかわからない。
「・・・むかつく」
ポツリとつぶやいたら、胸のざわめきに静かな波紋が広がるのを感じた。

むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつく

胸のざわめきを鎮めようと何度もつぶやく。
「むかつっ・・・」
静かな波紋は、うちかえされて重なり合い大波になってラスを襲った。
逃れるように毛布に潜り込んだが、大波はお構いなしにラスを飲み込む。
それはあまりに大量で、小さな心は膨れ上がった後、堪らず破裂した。

カタカタと震える体をぎゅっと硬く体を抱きしめた。
息をする度に変な声がでるから、口を噤んだ。
でも鼻もずるずるになっていてすぐに苦しくなる。
息を吸おうとすると嗚咽が漏れてまた口を噤む。その繰り返し
まるで陸に上がった魚の様だとおもった。

・・・オレは別に悪いことなんてしてない

・・・はずなのに・・・

声を抑えようと枕に顔を押し付けた。涙が染み込んでいく。



このまま、窒息死してもいい

だから・・・






どうかアイツにだけは見つからないで

 




拍手送信のページで公開してました。
ラスがリュカを嫌う理由です。
「ラスとヘンリーと」の連載終わる前に書かなきゃ、ラスが父親を嫌うっていう設定が分かって貰えない!
と思って慌てて書きました。
巧く書けたかわかりませんが。
「ラスとヘンリーと」でラスがヘンリーの言うことに「図星だ」と思った気持ちが
少しでも理解していただければ良いなとおもって書きました




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