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パンッッ!!



高い音が山道に響いた

何事かとスラリン達一同共に岩陰に目をむける

音の出所はリュカとビアンカだった。
三つ編みが跳ねて背中におちる。
横に向かれたリュカの顔は、自分達と同じように目が丸くなっていた。


「あんな奴放っておいて先行きましょう!!」
ビアンカがこちらへ身をひるがえし、馬車の手綱をひいておいら達の背中を押す。
有無を言わさぬその行動にモンスターはなんとなく従った。
一人残されたリュカは頬を押さえながらポカンとしていた。

動揺するおいら達と、構わず馬車を進めるビアンカ。

リュカが気になるが話しかけてはいけないような空気が流れていて、皆ちらちら後ろを窺うも歩を進めた。



山奥の村道
-前篇-


 

リュカは皆の後を距離を保ちながら、ノロノロとついて歩いた。
ひっぱたかれた頬がジンジンと痛い。

この痛みをもたらした本人に目を向ける。

馬車をうまいこと運ぶため皆にいろいろと指示を出している
山道で馬車を転がすというのはなかなかに大変なのだ。
町のように整備されていない、ただ人の往来で踏み固められただけの道である
道の幅が足りなかったり、雑草が茂っていたり、穴があいてたり、とにかく障害物が多く簡単にはいかない。

手に負えなくなって、助けを求められるのを期待するリュカだったが
ビアンカにとっては勝手知ったる村の山道だ。
慣れた手つきで難なくとこなしていき、自分の名前が呼ばれることは全くなかった。

モンスターの皆の特徴をよくとらえ、うまいこと指示をだしている。
ビアンカが指示を出すと「よしきた任せろ」と自分の時以上に皆はやる気をみせた。
そしてビアンカに褒めてもらっては、はしゃぐ。これまた自分の時以上に。

「なんだよ」


ピンクの唇が閉じたり開いたり笑ったりするのを仏頂面で眺める。

モンスターの皆にはあんなに笑顔で話しかけているのに
僕には一切向けようとしない。

「なんだよ」


リュカは唇を尖らせた。

ビアンカは何にも知らないからそうしていられるんだ


ここまでの道のりを思い出しリュカはこぶしを握りしめる
ビアンカはカボチ村で僕がどんな目にあったか知らないから…!

あの村人の冷たい視線が忘れられない。
誤解を解こうとしたが、何を言っても彼らは耳を貸そうとはしなかった。
唾を吐きかけられ石をなげつけられ罵声を浴びながら村を後にした。

それからというもの嫌悪の眼差しを向ける人がひどく増えた。
カボチ村のうわさが広まっているのだろうか

どんなに大丈夫と声を張り上げても無駄な努力に終わり、
それどころか自分まで魔物扱いされ、
ひどい時には攻撃されることもあった。

今リュカの精神は相当すりへっていた。



僕のことを理解してくれるのはヘンリーだけだ。
空を見上げ、遠い彼方にいる親友に思いをはせる。
ヘンリーがいた時は楽しかった。
ヘンリーがいた時も、モンスターを嫌悪する人はいたと思うが、全く気にならなかった。
今思えばヘンリーのあの歪んだ笑顔一つで全てがチャラになっていたのだ。

ヘンリーが隣にいてほしい

ヘンリーとの旅を思い出していると今度は憂鬱な気分がリュカを襲った。


ルーラを覚えて、今まで行った街どこでも飛んで行けるようになった時
ルラフェンから真っ先に向かったのがラインハットだった。

ヘンリーに会って、今まであったこと全てぶちまけようと思った。
全部聞いてもらって、あの歪んだ笑顔で一蹴してもらえば
ついでに皮肉の一つも言ってもらえれば
自分のこの気分は晴れるに違いなかった

だが、尋ねた親友は幸せの真っ只中であった。
愛しのマリアさんとついに結ばれたヘンリーは、歪んだ笑顔とは程遠い、最高にとろけた笑顔を浮かべていた。
プロポーズから結婚式までノロケ話をたっぷりと聞かされることとなる。
もちろん二人の結婚はとても喜ばしいことだった。

それと同時にひどい孤独感に苛まれた。
ラインハットの革命の後ヘンリーに別れを告げた時でもこんな感情は起こらなかった。


僕はヘンリーの横が自分の帰る場所と考えていたんだ。
もし旅に疲れた時はそこに帰れば良いと思っていた

だけど

もうヘンリーは僕のいない人生を歩んでいる。
それがひどく寂しかった

結局ヘンリーに愚痴ることなくラインハットを後にしてきた。

ヘンリーの横にもはや僕の居場所はない
ただのお邪魔虫だ

この世に自分だけが取り残されてしまった気がした


 


日が傾き、おいら達は暗くなる前に野宿の用意をはじめる。

木片をあつめて火をおこし、ビアンカがあり合わせの食材で料理をしてくれた。
これがびっくりするほど美味い
こんな飯は街でしか食べられないと思っていたのに。
おいら達は久しぶりの温かい食事に感動し、ものの数分で完食した。
もっとたらふく食べたい。名残惜しくて皿を舐めまわした
お行儀が悪いと言われるかもしれないが、
プックルあたりは空になった鍋まで舐めまわしていたので、
まだおいらは上品な方だ

リュカはと言うと離れたところでモソモソと干し肉を頬張っている。



一体この二人はいつまで喧嘩しているつもりだろうか。
ビアンカは何を怒っているんだろうか

それまでは良かったのに。
水のリングを求めて大河を遡っていたところ水門に行く手を阻まれた。
この水門を開けてもらうため、立て札にあったとおり水門を管理しているという村へと入って行ったリュカは、
今まで見たこともないようなご機嫌顔で村から戻ってきた
隣に知らない女性をつれて。

プックルが一目散に女性に飛びかかって行った。
何が気に入らなかったんだ!?とおいら達は焦った。
しかしリュカは止めもかばいもしない。
みるとキラーパンサーは咬み付きも切り裂きもせず無邪気にじゃれついていた。
女性は「もしかして、プックル!?」とか
「まあ、あなた大きくなりすぎよ」とか
「昔いじめられていたなんて嘘みたいね」とか言いながら首の毛を両手でモシャモシャしている。
どうやら昔なじみのようだ。
プックルは女性になでられ猫のようにゴロゴロとのどを鳴らしている。
傍若無人のプックルのこのかわりように、おいら達はポカンと口をあけた


「これが僕の仲間だよ」

唐突にリュカが紹介した。
緊張が走った。
今まで人間には散々罵られてきている。
今度は一体どんなことを言われるのだろうか

クリクリとした印象的な瞳がおいら達を映した。
ドキドキしながら裁きの時を待つ

「え?」

素っ頓狂な声と同時に首が横に傾いた。

肩すかしをくらった。


周りを見渡しているがおいら達以外は周りに誰もいないので、またこっちのほうに視線がもどってくる。
クルンとした瞳がおいら達モンスターを映す。きれいな南国の海の色だ
目が合うと、うふっと嬉しそうに指がのびてきてヨシヨシプニプニされた。
そしてまたあたりを見渡す
「どこ?」
キョロキョロと「仲間」を探す女性に
「ここだよここ」
ぴょんぴょんとはねて、アピールしてみる。



「えーーーーーーー!!!!」



「そんなに笑わないでよ」
おなかを抱えて笑うビアンカに、頭をかくリュカ。でも顔はものすごく嬉しそうだ

「だ、だって仲間がいるっていうから、ムキムキな戦士とか気難しい魔法使いとか想像して緊張してたんだもの」
目に涙がたまっていた。
「僕達でも緊張してっ」
ほっぺを膨らませると
「うんっ!そうよね!ごめんねっ。私ビアンカ。よろしくね!仲間があなた達でうれしいわ!!」

抱擁がアルカパ式のあいさつらしい。
嬉しそうに一人一人交わしていく
嫌悪の感情が全くない
だって本気で信用してないと、いきなり初めて合うモンスターをハグするなど出来ないはずだ
まるで従来からの友達かのようだ
おいらにもギュッとしてくれた。
リュカとは違い柔らかくていい匂いがする。同じ人間なのにこれはどういったことだろう
その腕の中に温かい幸せを感じた。
皆に笑顔が浮かぶ
こんな人間もいるんだ。

そういえばサラボナで会った女の人も壁がない人だった。
本当無防備に、何の疑いもなく懐に飛び込んで来るものだから、逆にこっちが気を使ったくらいだ。
あの子はもしかしたら僕達がなんなのかちゃんと理解してないのかもしれない
おいら達モンスターに囲まれてるのに、のん気にニコニコと歌を歌っている姿を思い出し苦笑。
ああ、そういえばあれは盗賊攫われそうになった後じゃなかったか
リリアンってやつが知らせに来たから未遂におわったけど
思い出せば出すほど不思議な子だった。

 




ビアンカを向かえて楽しい道のりだったはずなのに。

事の発端は、初めて人間のパーティとすれ違った時だ。



リュカはすばやくビアンカと共に岩陰に身を隠した。

人間を動揺させないように
普段はなるべくおいら達が馬車の中に隠れるようにしているのだが
こんな山道だと、パトリシアだけでは進めないため
全員が降りて馬車を押しながら進むことになる。
そんな時人と出会うと、リュカ一人が身を隠してもらうことになっている。

この魔物の集団をみて、攻撃してくるか逃げだすか。
出来れば後者であってほしいけど、残念ながら攻撃してきた。
ピエールが応戦体制に入る。もちろんこちらから攻撃はしない。
軽くかわしながら全力で逃げ出す。


人間達のせせ笑う声が聞こえてきた
あったまにきたがピエールに止められてしまった。
このピエールの統制が及ばないプックルが制止を無視して飛び出した。
馬鹿笑いしてた奴らを自分の雄たけびですくみあがらせてから、フンと鼻をならして戻ってくる。
プックルは乱暴者だが正直こういうところ、おいらは好きだったりする

人間が完全に見えなくなってからリュカ達と合流しようとしたときだった。
リュカがビアンカに引っ叩かれていた。

そして、今にいたる。


背景「これビアンカっぽい!」と思って選んだけど
じゃまになって読みにくいかも
ごめんなさい






後編

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