ラスとヘンリーと
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あれ以来アイツは無茶をしなくなった。
人助けを止める事はなかったが、わざわざ命を危険にさらす状況にすることは無くなった。

皆が座り込みをきめたのはあれが最初で最後で、あれ以来奴らがかばいに入ることはなかったが
それでも、リュカを避けることはなくなり、ちゃんと感謝の気持ちを表わすようになった。

オレはというともちろんリュカをかばいに入っていた。
でも…リュカ以外をかばいに入ることは出来なかった。

でも自分はこれでいいんだと思った。
どう頑張っても俺はリュカの様にはなれない。
おれは、これが精一杯だ。

あいつが他人をかばい、あいつをオレがかばう。
そんな循環が自然と出来あがった。

オレ達はよくしゃべるようになり、
やっと、友達と呼べるものになることができたんだ。


「俺の話はここまでだ。」
そういってヘンリーは静かに息をはいた。

 


声を発することが出来ない。
どんな言葉を吐けばいい?
慰めの言葉?憤りの言葉?驚きの言葉?
こんなこと思い出させてごめん?
それとも話してくれてありがとう?
どれもなんだか、場違いなものに思えて声に出せなかった。

そもそも声を出していいのだろうか?

「参考になったかな?」
重たい沈黙を破ったのは、軽い声だった。
だが、意味がよくつかめない。
今の思考とまったく関係のない方向からの質問だった。
参考…?
「何の?」
キョトンとしながら尋ね返す。
「アイツを好きになる方法の」
一瞬の間。
「オレは別に…!!」
「ああ、そうだったな。すまんすまん」
また力みそうになったオレをヘンリーはどうどうと宥める仕草をした。

明らかにこいつが信じてないことが分かって、釈然としなかったが。
とりあえず昇ってしまった血を落ち着かせる。
冷静に思い返せば、この話になったのはそういう経緯があったんだったと思い出した。
話を聞いているうちに、目的が何かすっかり忘れていた。

今の話を参考にしてアイツを好きになるきっかけを見つけれたか?
「…」
いや。参考になる筈がない。
状況も立場もあまりに違いすぎる。

結局でた結論は「オレとコイツは違う」ということ。


「そうでもないと思うぞ」
ヘンリーは俺の結論に異論を申し立ててきた。というかそれ以前に
オレはまだ何も言ってねー。
不機嫌な顔をしながら、前の曲者を睨む。
お前の思考を読むなんて朝飯前なんだよと、緑の瞳がいっていた。
オレは憮然とした表情できっぱり否定した。
「違う」
「違わないさ」
ラスはむっとした。一体何が言いたいんだこの人は。
どう考えたって同じ立場になりようが無いじゃないか。
「俺は、奴隷じゃないし、アンタはアイツの子供じゃない!それに!!!」
「勇者でもないしな。」
言いにくいことをサラリと言われ、ラスは言葉につまった。

「でも、同じだ」

その一言でオレは目を向けた。
穏やかな瞳が俺を映していた。
不愉快な気持ちが、緑の色に溶かされていく。
こいつは、「勇者だから」といって特別扱いをしているわけではない。
それが伝わってきた。

「自分が何故父親を嫌うのか考えたことはあるか?」

何故嫌いか?
理由などない。
ただ、見ていたらイライラするだけだ。
理由など考えたこともない。

「何故考えない?」
首を振るオレに、更に言い募ってきた。
オレはそれにイラつきを感じた。
考える必要などないではないか。嫌いなものは嫌いなんだ。
「そんなことどうだっていいだ…」
「オレも理由を考えなかった。」
オレの言葉に被せてヘンリーは語りだした。
「何故なら、そこには面白くない答えが待っているからだ。」

面白くない答え…?

ラスはもう一度、さっきの話を思い返す。
確かにこいつも何故嫌いかを考えるのを避けていた。
今のオレと同じように…
そして結局ヘンリーが最後に出した答えは…

一瞬大きく自分の足元が揺らいだ気がした。胸が不安がって悲鳴をあげる。

「違う」
オレは、振り払うように頭を振った。

だって
「オレは何も悪いことなどしてない…」

小さな拳を握る少年を、ヘンリーは憐れんだ。

バン!!!
突然後ろの扉がひらいた。
それをいいことに、ラスは今まで頭の中にあった不愉快な物全てを放棄した。
振り返ると、緑と黄色のおかっぱ頭が二つ並んでいた。

コリンズ達と遊んでいたことを思い出した。

「ラス!何やってるんだ!?」
ビッと指を刺しながらそばかすの少年が叫んだ。

げ。目的をすっかり忘れていたなんて、言えない。
今何やっていたかも言えるはずがない。
ラスは答えに窮した。

「なんだ、お前らもお仕置を受けに来たのか?」
声を返したのは俺ではなく俺の後ろからだった。
え?とコリンズの親父を振り返る。

「お、お仕置?」
その嫌な響きにコリンズも、数歩後ずさった。
「ラス、お前何をやったんだ?」

またラスにお鉢が回ってきた。
ティルならまだしもラスはこういう咄嗟のアドリブには弱い。相当弱い。
やはりえ?っとまた固まってしまった。
が、ヘンリーがすぐにフォローに入る。
「ラス君は、ものすんっっっっごい重要で大切で大事で大切な書類をあろうことか持ち出そうとしたんだよ」
わざとらしいアクションで、重大な事である事を強調しながら、大げさに嘆いて見せた。書類を持つ手が震えている。まさに迫真の演技。

重要書類?ラスは先ほど書類をかき集めて「いいのいいの」とかいって手をひらひらさせていた姿を思い出し噴出しそうになった。だが、ここで笑っては元も子もないので堪える。

「だから罰として、俺の手伝いをさせている」
ヘンリーは力んでいた力をふっと抜いて、へラっとそう付け加えた。

コリンズは、白い目で父親を見た。
「…親父。ただ単に、楽がしたいだけだろ!」
期待通りの突っ込みが返ってきてヘンリーはほくそ笑んだ。
「失敬な。オレは、ラス君のためを思って…」
「母上に言ってやろう。『いたいけな子供を脅迫して働かせてました』って」
「…お前かわいくないなぁ」
「親父が根性悪なんだよ」

ヘンリーがふと、コリンズの後ろをみると、幾ばくか怪訝そうな色の青い瞳と目が合った。

あ、この子は気づいたかも。
ニヤリと笑い返すとちょっと目を見開き、頬を少し染めてティルは目を逸らした。
「ラスも騙されるなよ。コイツの口は法螺で出来てるって言っただろう?後は吹くだけになってるんだ。」
「…オイ」
それはあんまりな言われようだ。
父親の声が低音になった瞬間コリンズは、ティルを引っ張って廊下へ逃げだした。
ラスも早く来いと、コリンズに催促されてラスは椅子から降りる。
チラリとヘンリーを振り返るとウインクがひとつ返ってきてそれだけで十分だった。

覚えとけよ。
部屋を出る寸前、声がかけられた。
「アイツはお前を見放したりしない。絶対にな」
「だから、安心しろ」

この時はこの言葉が何を意味しているのかわからなかった。
何を安心するんだ?
オレは、適当に相槌を打ちその部屋を後にした。

この言葉の意味を心強さを理解するはもっともっと後の話。


おわったぁぁぁぁぁT▽T
長かったぁ・・・
もう最初のほう覚えてない><
読み返したけど文章変だし稚拙だし恥ずかしい(ノ日ノ)
時間開けたおかげで、話の目標を見失いそうになり
なんとか支離滅裂にならないように、がんばってまとめた気がでいるのですが(^^A)
最後までお付き合いありがとうございますw
また、何か書きたいとは思ってはいるんですけど
書きたいと思ったから、続きがありそうな終わり方をしてみたのですが
まあ。また覗いてやってくださいなw


 

 

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