トロッコの洞窟
-3-
その不可解な行動にラスは怪訝そうに目の前に広げられた手のひらを、見る。 と、 いきなり焦点が合わなくなり、踏みしめてる地面が前方へと回転した。 どういうわけか視界に天井が広がり、足の方へと通過していく。 首が反り返る。世界が反転する。 途中で足と背中に何かがあたった。 それがプサンの腕だと気づくと同時に、ラスは足が地面から浮くのを感じた。 ラスは焦った。 プサンの腕の中で平行を保とうとして、あらぬ方向へ体が仰け反る。 次に襲ってきたのは、息もつけぬほどの脱力感。 一体何をした? この体の異常を起こしたと思われる張本人を見た。 今自分は、得体も知れぬ存在に支えられていて、自分の体は息一つ正常につくこともできなくなっていた。 こいつは本当に味方か? プサンと出会ったとき、隣にいたティルは脅えていた。 実は魔族の一人でオレを葬るために、味方のフリをして隙を窺っていたのではないのか? ラスは、震えた。 どうしてもっと警戒してなかったんだ。 あのティルが、あんなにも怖がっていたと言うのに…!! しかし、今更後悔しても遅かった。 もう自分の意識は完全に捕まれてしまって、ものすごい力で闇の深淵へと沈まされて行く。 「や…」 自分を支える腕を掴んだ。 大丈夫ですよ。とプサンは優しく微笑んだつもりだったが、ラスの目にはもはや悪魔の微笑にしか映らなかった。 今、首を絞められるだけで自分は抵抗も出来ずに死ぬだろう。 ラスは恐怖に震えた。 恐ろしくて涙がにじむ。 『死んだらどうなるのか。』 今まで何度も考えてきた事が頭をよぎった。 死後の世界。 自分の命を振りかざしながら魔王に向かっていかねばならないラスにとって 死とはそう遠くの世界ではない。 死んでも怖くないように極力楽しい世界を想像したけれど恐怖は薄れる事などなかった。 教会で善い人は天国に悪い人は地獄にいくのだと教えられた。 そこは永遠の地だから天国に行ける様に生きていきましょうと。 天国なんてそんなもの気休めにもならない。 そこが天国だろうと地獄だろうとあまり大差はないとラスは思った。 どちらにしろ一人ぼっちなのだ。 この世界には戻れない。 それだけは確かだった。 死んだ者に自分は会ったことなどないから。 もう誰にも会えない。 プックルにもサンチョにも城の皆にも親父にも …ティルにだって。 自分の体は冷たい地面の下で朽ちていくのだ。 そうして忘れられていく。 さびしい。 こわい。 いやだ。 …死にたくない… 歯を食いしばり必死の抵抗を試みる だが抵抗もむなしく意識は容赦なく拡散していく。 魔法をぶちかまそうとしたが何一つ巧く紡ぐことは出来なかった。 ラスの意識は途絶えた。 |
死について。昔はよく考えました。
考えれば考えるほど怖くなってきます。
怖くないように怖くないように考えてました。
一番怖いのは、地獄に行く事じゃなくて、一人ぼっちになることなんです。
皆がいるなら地獄に行きたい。
永遠ってなんだろう。ずっと天国にいる。何のために?
死の世界は広がり続けているんだろうか。
それともそこにも終着点があってそれが
前世、生まれ変わり。
人は人へ?
地球が滅んだらじゃあその輪廻はどこにいくの?
それとも他のモノへ?
それは結局自分ではないでしょう?
新しい個人でしょう?
生まれ変わりとか、前世に意味があるの?
終りはいつ?どうなるの?
そのたびに未知な恐怖を味わうの?
死んだら、そこで終り。それでいいじゃん。
眠るとき意識が無くなる。脳が休むから。恐怖も何もない。ただなくなる。
朝、目覚めるとき自分の意思じゃなく、体の生理的な反応で目覚める。脳の働きで目覚める
それがなくなるだけ。
脳が働かないから。
意識がもどらない
それだけ。
あの世もない。生まれ変わりもない。
それが自分の終り。
それが一番気楽だと私はおもう。